EDIFICIO HISTORICO(歴史的建造物)と呼ばれる大学旧校舎
正面ファサードのレリーフは、有名な「学院は王のため、王は学院のため」のメッセージとフェルナンド、イサベルのカトリック両王の胸像、及び、カルロス5世とその王冠の上にある地球儀に暗示されるグローバルな威厳や権威などが主要なモチーフである。
注目は、これらの上方にギリシャ哲学の4枢要徳とされる、人としての4つの美徳、即ちLa Justicia,(正義)、La Templanza,(節制)、La Prudencia,(知恵)、La Fortaleza,(勇気)、のシンボルが刻まれていることである。それはあたかも大学の遺伝子として刷り込まれているようで、今日でも、全世界で通用する普遍的な価値観が見通されていたと言える。La Justiciaのシンボルマークの天秤は今でも世界中の司法の現場でよく見られるものである。
ファサードのなかの一匹の蛙(La Rana)探しが興を誘う。
二階回廊へ続く階段の手すりの彫刻は、当時学生が俗世界から神聖な空間に頭を切り替えねばならなかった境界だったとか。
アナヤ広場側にあるこの建物の裏側壁に二枚の記念プレートがある。セルバンテスの「ドン・キホーテ」および「ガラスの学士」からの引用で、前者は自由の大切さ、後者はサラマンカの魅力を伝えたもの、特にセルバンテス歿300年追悼記念の「ガラスの学士」からの引用は「サラマンカに初めて訪れた人は必ず再度訪れる。」と地元の人も口にする。
アナヤ広場を挟んで大聖堂の向かいは文献学部の校舎。ここはナポレオン軍の駐屯本部のあったところ。広場側の窓を保護している鉄柵にナポレオン軍のロゴが残っている。
VITOR(ビトール) について
学舎の壁に赤い色でV-I-T-O-Rのアルファベット5文字を使った記号と名前と年の入った書き物が多く見られる。これはVitorと呼ばれる。
昔も今も学位を修めるには一連の試験に合格しなければならない。学生にとって合格はまさに歓喜であり大喝采である。しかし学位の修得者は喜んでばかりはいられない。
昔、学位修得者は、大学関係者も招待し人数分の食事を準備して祝賀会を開催するのが常であった。メニューも大体決まっており、無論ワインやTunaの楽団も用意された事だろう。そのあとプラサ・マヨールで闘牛も開催しなければならなかった。その時の闘った牛の血にパプリカ、染料などを混ぜて塗料を作り、大学の所定の壁にこの栄誉を記念してVitorを書き込んだ。こうした費用はすべて合格した学生が負担することになっていたそうだ。
塗料の材料はともかくとして、この伝統が今でも継承されているのである。しかし学位の修得者がVitorを書いても書かなくてもその名誉と祝福は昔も今も変わらない。