日西文化センター概説

日西文化センター

このセンターの設置計画は、サラマンカ市内の大聖堂の古いパイプオルガンの修復が邦人の手によってなされたことが機縁となり、日本の天皇・皇后両陛下が皇太子時代を含めて2度もサラマンカをご訪問になったことを契機としてもちあがりました。
 同大学では、日本とスペインの相互理解を深めるために、新たに日本語および日本研究講座を同大学に設けるとともに、同大学所有のサン・ボアール宮(16世紀の由緒ある建造物)の内部を復元修復し、ここに同大学の機関としてこのセンターを設置しました。
 この修復工事は、40の日本企業および団体と日本万国博覧会基金協会の協力を得て、1997年開始、1999年に工事が終了し、同センター内ホールは、美智子皇后陛下のお名前から「美智子さまホール」と命名されました。
 日西センターでは、市民向きの日本語講座のほか、各種文化イベントや教室、ワークショップなどが適宜開かれています。
 また、「美智子さまホール」では、日本や日本の文化と関連するようなアーティスト作品を中心に、展覧会が開かれています。

建造物の由来

日西センター1F

日西センター1F

センターのある建物の中庭の壁の一面にあまり目立たないがこの建造物の由来が刻まれている。

時代順には下段から始まり上段へ移る。

以下その原文のまま紹介する。

 

<上段(小)
ESTE EDIFICIO RECONS
TRVIDO. REFORMADO Y AM
PLIADO.
SE INAVGVRO EL
(  )DEL (   ) DE MCMLVII
*本建造物は建て替えられ増改築を経て1957年にオープンしたものである。

<下段
EN ESTE PALACIO
CVYA CONSTRVCCION
INICIO
ARIAS CORBELLE
EN MCDLXX
Y FVE PROPIEDAD DE LOS
MARQVESES DE ALMARZA
Y DE CERRALVO
SE HOSPEDO EL
DVQUE DE WELLINGTON Y VIVIO DONA
MARIA MOCTEZVMA
PROTA    GONISTA
DE BELLA LEYENDA
SALMANTINA
*本宮殿はARIAS CORBELLの命により1470年に建造が始まり、その後ALMARZA侯爵およびCERRALVO侯爵が所有していたものである。WELLINGTON公爵の宿舎にもなり、サラマンカの麗しき伝説の主役であるMARIA MOCTEZUMAの住まいでもあった。

 

MARIA MOCTEZMAにまつわる伝説「マリアの復活」

日西文化センターは中世サン・ボアール宮殿跡にあることはよく知られている。この建物の向かいに聖人ボアールを祀った教会があり、広場がPlaza San Boalと呼ばれている。夏になると市民劇団がセンターの中庭でこの「マリアの復活」伝説の小演劇を披露することがあった。伝説は中世のこの宮殿での出来事である。

この宮殿に住むアルマルサ侯爵夫人Maria Moctezumaが死を迎えた。伯爵夫人は思いやりが深く寛大な心の持ち主であったことがよく知られており、棺の中で静かに眠った彼女の周りには別れを惜しむ家族や友人ばかりでなく、広場には多くの人たちが集まっていた。棺とお供の人の安全を確保するため遺体は宮殿から隣接する教会につながる地下通路から移動されることになった。集まっていた群衆は宮殿のバルコニーからの知らせでそのことを知ると、みな帰り始め、物見高い人だけが数人残った。夜になって広場は無人となり故人の家族も教会を後にした。あとには遺体を守るための3人の下男がいたのだが彼らはすぐに懺悔室に隠れ場所を見つけぐっすりと寝込んでしまった。

このとき聖具納室係(sacristán)のひとりが現れた。

彼は侯爵夫人の冷たくなった左手の指に金色に光る高価な指輪がはめられているのに気づいて、聖人ボアルの厳格な視線をものともせずこっそりと棺台に上った。下男たちは寝込んでおり,その間に彼はロウソクの光で輝いている指輪のほうへ手を伸ばし宝石を引き抜いたのである。

下男たちはいきなり大きな金切り声と衝撃音に眼を覚ました。そして見たものは驚いたことに、侯爵夫人が棺の中に座って、困った様子で空になった左手の指を眺めていたのだ。そして彼女の横には聖具納室係が抜き取った指輪を手にしたまま気を失って倒れていた。夫人は不思議そうに「私はここで何をしているの?」と訊ねた。

侯爵夫人はその後もこの不思議な復活の話と併せて長生きをしたそうだ。そして生き返らせてくれた聖具納室係には終身の年金も与えたという。

(出典)Leyendas, milagros y rumores extraordinarios de la ciudad de Salamanca
Tercera edición: 2009
Tomás Hijo
Amaru Ediciones,  ISBN:978-84-8196-270-3
****サラマンカの伝説(第3刷)
この町に伝わるありもしないと思われる伝説、奇跡、そして噂の数々。
作:トーマス イホ

 

謝意

サン・ボアール宮殿修復

サン・ボアール宮殿修復

1997年、サラマンカ大学の所有するサン・ボアール宮殿の内部を復元修復し、
1999年工事が終了し日西文化センターが設立された。この建物は4階建ての
延べ3,693㎡の広さを持ち、3,044㎡が有効面積である。

 

 

この建物の設立にご協力のあった企業や団体に心より感謝申し上げます。
(以下順不同)

・日本国際博覧会機構財団 ・日本生命 ・近畿日本鉄道 ・宇部興産
・トヨタ自動車 ・東京三菱銀行 ・さくら銀行 ・三菱電機 ・花王
・三井物産 ・日本電気 ・三菱化学 ・日産自動車 ・日本電装
・朝日ビール ・富士通 ・JTBスペイン ・住友商事
・YKKスペイン ・シャープ ・塩野義製薬 ・武田薬品
・藤沢薬品 ・日本タバコ ・サントリー ・名古屋スペイン協会
・大和証券 ・住友海上火災 ・三菱自動車 ・那智不二越 ・丸紅
・日商岩井 ・光洋精工 ・三洋電機 ・日本航空 ・伊藤忠 ・三菱商事
・トーメン ・ヤマハ ・新東通信

 

 

更なる発展へ

近年になると、センターの活動、特に日本文化の紹介について近隣の地域からの要請もあって、Villa Mayor, Santa Martha de Tormes, Plasenciaでの定期的な「Japan Day」の開催もあり、こうした動きは更に高まるものと予想され、センターの一層の発展が期待される。